国史跡の飯田古墳群「上溝天神塚古墳」

上溝天神塚古墳とは

上溝天神塚古墳（あげみぞてんじんづかこふん）とは、国史跡に指定されている飯田古墳群のひとつです。後世の開発で原形を大きく変えられており、現在では後円部墳丘の東側のみ従来の形状を見ることができます。また、後円部には埋葬施設の横穴式石室があります。

石室は、玄室と羨道が明確に分かれていない無袖式と呼ばれる形態で、大形の自然石を用いてつくられています。

• 古墳形態：前方後円墳
• 墳丘長　：41.5m（推定）
• 埋葬施設：横穴式石室
• 推定年代：6世紀中頃

 

飯田古墳群とは

飯田古墳群（いいだこふんぐん）とは、飯田市の天竜川右岸段丘上の南北約10km、東西約2.5kmの範囲にあり、古墳時代中期～後期（5世紀後半～6世紀末）にかけて構築された18基の前方後円墳と4基の帆立貝形古墳からなる古墳群です。この中で11基の前方後円墳と2基の帆立貝形古墳が国史跡に指定されています。

また、長野県にある前方後円墳の約半数が飯田市内にあります。この数の多さは、飯田地域がヤマト王権と密接な関係にあったことを示しています。さらに、内陸交通においても東西を結ぶ重要地であり、ヤマト王権の影響を受けながらも周辺地域の多様な文化も取り入れて独自の古墳文化を築いていたことが分かります。

国史跡に指定されている飯田古墳群一覧↓

名称	古墳形態	推定年代	所在 地区
高岡第一号古墳	前方後円墳	6世紀前半	座光寺
飯沼天神塚（雲彩寺）古墳	前方後円墳	6世紀前半	上郷
御射山獅子塚古墳	前方後円墳	5世紀末～6世紀	松尾
姫塚古墳	前方後円墳	6世紀前半	松尾
上溝天神塚古墳	前方後円墳	6世紀中頃	松尾
おかん塚古墳	前方後円墳	6世紀後半	松尾
水佐代獅子塚古墳	前方後円墳	5世紀後半	松尾
大塚古墳	前方後円墳	5世紀後半	竜丘
塚原二子塚古墳	前方後円墳	5世紀末	竜丘
鏡塚古墳	帆立貝形古墳	5世紀後半	竜丘
鎧塚古墳	帆立貝形古墳	5世紀末	竜丘
御猿堂古墳	前方後円墳	6世紀中頃	竜丘
馬背塚古墳	前方後円墳	6世紀末	竜丘

 

上溝天神塚古墳

古墳

上溝天神塚古墳、残っているのは後円部のみです。

正面側からは全く分からないのですが、後側にまわると古墳の姿が見られます。

遺物としては、鏡、鉄鏃、刀装具、馬具、帯金具、金環、玉類、土師器、装飾付須恵器などが出土したようです。

正面側には天神社が祀られています。

鳥居を通り抜けて右端にある細い道から古墳（石室）に行くことができますよ。

石室

古墳の後円部には横穴式石室があります。

この石室がとても大きく、大人が立って入れるほどです。一つ一つの石も巨大ですよね。

 

水佐代獅子塚古墳

水佐代獅子塚古墳、上溝天神塚古墳から比較的近い場所（徒歩10分弱）にあります。

円筒埴輪、刀や矛、鉄鏃などが出土したと伝えられています。また、後円部に石室があったようですが、現在は確認できません。

• 古墳形態：前方後円墳
• 墳丘長　：60.0m
• 埋葬施設：横穴式石室（推定）
• 推定年代：5世紀後半

前方部には、飯田市の天然記念物に指定されている水佐代獅子塚のエドヒガンがあります。この桜の古木は、地元では「おたちふの桜」と呼ばれて親しまれています。

 

おかん塚古墳

おかん塚古墳、上溝天神塚古墳からすぐ近い場所（徒歩5分）にあります。

鈴、鉄鏃、鹿角装の刀子、馬具、土師器片、須恵器片などが出土したようです。また、後円部と前方部の両方に横穴式石室がありましたが、現在は後円部の石室のみが残っています。

• 古墳形態：前方後円墳
• 墳丘長　：50.0m（推定）
• 埋葬施設：横穴式石室
• 推定年代：6世紀後半

 

御射山獅子塚古墳

御射山獅子塚古墳、上溝天神塚古墳から比較的近い場所（徒歩10分）にあります。

古墳の形状は良好に残っており、国道153号沿いからも見ることができます。これまでに正式な発掘調査が行われておらず、埋葬施設や副葬品などの詳細が不明な古墳です。

• 古墳形態：前方後円墳
• 墳丘長　：58.0m
• 埋葬施設：横穴式石室（推定）
• 推定年代：5世紀末～6世紀

 

駐車場

残念ながら周辺に専用の駐車場はありません。天神社前に若干のスペースがあります。

 

補足情報・アクセス